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世界大学ランキングが上がっても・・・ケンブリッジ、NUSからの留学生が東大で感じたこととは?

世界大学ランキングの1つの、QS World Rankings2019年版が発表されました(URL)。この大学ランキングは、国際ランキング専門家グループに公式に認められているもので、世界の大学ランキングとして信用度があるものとされています。そのため、日本政府の大学の国際化政策の中でも、この世界大学ランキングにおける日本の大学のランクイン状況を1つのKPIとしてトラッキングしています(URL)。

そんな中、2019年版のQS世界大学ランキングでは、東京大学が過去10年間で最高の23位にランクインしました。これは、日本の大学の国際化の快挙とし、様々な方面から注目を集めています。高度外国籍人材の人材紹介を行う私たちにとっては、この世界大学ランキングは私たちのビジネスへの影響があるため、特に真剣に注目をしています。このランキングに日本の大学がしっかりと上位にあることで、日本の企業が日本在住の外国人留学生の「優秀さ」を確信してくれるためです。

しかし実際に現場で外国人留学生と接している身としては、日本の大学が世界大学ランキングの上位にあるというだけでは、優秀な外国人留学生を確保しつづけるのは難しいと感じています。今の時代は、公式なデータやランキングもさることながら、口コミがものをいう時代です。東京大学をはじめ、日本の大学で勉強をしている外国人留学生の方々が、その体験をどのように周りの人に伝えているのか、ということも大きな影響力をもっていくと考えます。

今回は弊社に登録している外国人留学生で、東京大学の留学生2人にインタビューをしました。今回の2人は、今年のQS大学ランキングで東京大学よりも高くランクインした、シンガポール国立大学とケンブリッジ大学から東京大学に留学された方々です。

世界のトップ大学からきた外国人留学生が語る東京大学の魅力、そして課題とは?

今回は東京大学の留学生2人に、東京大学での経験についての質問をしました。一人の外国人留学生は、ケンブリッジ大学で学士を修了し、日本の文部科学省の奨学金で東京大学の修士課程に入学した方です。現在、東京大学の博士課程で研究されています。もう一人の外国人留学生は、シンガポール国立大学で学士を修了し、同様に文部科学省の奨学金で東京大学に来ました。東京大学で修士号・博士号を取得し、ポスドクまで進むかを検討した後に、最終的に民間企業に就職を決めた方です。

 

東大留学への期待とその現実

-二人とも、世界大学ランキングでは、東京大学よりも上に位置する大学から、東京大学への入学を決めましたよね。そもそも、なぜ東京大学に来たいと思ったのでしょうか?

元シンガポール国立大学:「私が東京大学に留学しようと思った理由としては、東京大学の研究の質が高いことがあります。また東京大学であれば国際的な研究コミュニティとのつながりを得られるのでは、という期待がありました。他にも、当初はアカデミアの世界でずっと進んでいきたいという思いがあったので、ポスドクの機会が東京大学であればたくさんあるのでは、ということも期待していましたね。」

元ケンブリッジ:「私も同様に、東京大学であれば、クオリティの高い研究ができるのではということを期待してきました。東京大学が有名だということは、知っていました。ただ、東京大学卒業だということが、国際的に特に評価されるとは、そこまで正直期待してなかったですね。」

- なるほど。お二人ともそれなりの期待をされていたということですが、実際に東京大学で研究をしてみて、その期待に応えられるクオリティだったと感じますか?

元シンガポール国立大学:「研究の質は、どの研究室に所属するかによって、かなりばらつきがあるという印象を受けてます。1つ期待ハズレだったことをあげると、国際的な研究者とのコラボレーションです。コラボレーションはある程度ありましたが、期待していたほどではなかったですね。」

-QS世界大学ランキングでも、東京大学は外国人教員比率や留学生比率の低さが目立っていました。そういった点も、国際的な研究者とのコラボレーションが限定的になってしまっている理由かもしれないですね。

元シンガポール国立大学:「そうですね。あと私は東京大学でのポスドクのポジションを探していたのですが、このポスドクのポジションはとても限られていました。特に外国人留学生が狙えるポスドクは非常に少ないうという現実に直面しました。それもあって、アカデミアに残ることを断念して民間企業に就職したんです。」

元ケンブリッジ:「私が東京大学の修士課程・博士課程で所属している学科は、設立されて間もないところです。そのため、その学科内でとれる授業の数はあまり多くありません。しかし幸いにして、学科をまたがって他の学科の授業も柔軟にとれたため、そこはあまり問題ではありませんでした。期待はずれというのではなく、期待以上だったことしては、入学してから東京大学が国際的にもしっかりと高く評価されていると色々な場所で実感したことです。ここまでとは期待していませんでした。」

-ちなみに、東京大学以外に進学を検討していた大学はどこだったのでしょうか?

元シンガポール国立大学:「東京工業大学、ケンブリッジ大学、あとはドイツのマックス・プランク研究所です。」

元ケンブリッジ:「GRIPS、 香港大学、香港科技大学、あとはシンガポール国立大学です。」

 

ケンブリッジ大学、NUSと比べて学生や教育の質は?

-お二人とも、東京大学よりも大学ランキングで上位に位置する大学にもともと所属されていましたが、率直に言って、前の大学と比べて東京大学の学生の質をどのように感じましたか?

元シンガポール国立大学:「シンガポール国立大学でも東京大学でも、外国人留学生と現地の学生とのクオリティの差はあるように思いますね。いずれの大学においても、現地の学生の方が外国人留学生より質が高いというのはあるのではないでしょうか。」

元ケンブリッジ:「今の私の学科にいる学生は、広く浅く学術的なバックグラウンドを持っているという印象を受けます。そのため、学問的な知識という点においては、ケンブリッジの学生の方が、一つの分野における知識が豊富と感じることはあります。」

-なるほど。海外では、「あなたは何を勉強していますか?」と聞くと、心理学を専攻している人だったら「心理学者です」と答えたり、経済学を専攻している人は「経済学者です」と答えたりしますよね。それだけ専門性を突き詰めていたり、誇りを持っている人は海外には多いかもしれないですよね。

元ケンブリッジ:「はい。ただ一方で、東京大学は様々な学術的背景がある学生が多いので、オープンマインドで、考え方は柔軟だという印象を受けています。そういった人たちから学ぶことはとてもたくさんあって、私は一緒に勉強できる毎日をとても楽しく感じています。」

元シンガポール国立大学:「専門性という点においては、東京大学の方が、学生を落第させたがらないですよね。そのため研究結果の出来が悪い学生であっても、卒業できてしまいます。私は修士課程、博士課程と東京大学で研究をしていたのですが、東京大学の修士課程の学生は、研究よりもとにかく就職活動に熱心という印象を受けます。卒業するかなり前から、多くの時間を就職活動に費やしますよね。」

-私も東京大学の修士課程を卒業しているのですが、入学してすぐに外資系企業のインターンシップの応募を始めたり、就職活動に忙しかったですね。指導教官からよくそのことを叱られていたのを思い出しました。ちなみに、学問的(アカデミック)な質という意味では、どんな印象を持っていますか?

元ケンブリッジ:「ケンブリッジ大学と同等なクオリティと感じています。非常に高いですね。」

元シンガポール国立大学:「私もシンガポール国立大学と東京大学の質は同じくらいだと感じています。」

-お二人とも東京大学の学問的な質には満足しているとのことですね。確かに大学ランキングでも学術関係者からの世評というのでは世界的にも東京大学は高いとされています。

元シンガポール国立大学:「学術的なレベルにおいては、シンガポール国立大学も東京大学も同じくらいだと思いますが、シンガポール国立大学の方が、研究結果をマーケティングするのがうまいという印象がありますね。その結果、シンガポール国立大学は海外からの研究者を呼び込むのを成功しているのではないでしょうか。このマーケティング力が、東京大学とシンガポール国立大学のランキングの差につながっている1つの要因かもしれないですね。」

-確かに外国人留学生と外国籍の教授の数が、今の東京大学の世界大学ランキングを下げている1つの要因にはなっているようです。お二人の意見では、外国人留学生の数がなかなか増えていないボトルネックを3つあげるとしたらなんでしょうか?

元シンガポール国立大学:「主要な授業をもっと英語で提供してほしいと思います。次に、アカデミアでのキャリアを考えている外国人留学生への卒業後のチャンスが東京大学では少ないです。東京大学に留学してくる外国人留学生でアカデミアのキャリアを考える人は一定数いると思いますので、そういった人たちも卒業後に希望が持てるようになるといいですね。最後に、外国人教員の数が多くなれば、外国人留学生の数も上がるのではないでしょうか。」

元ケンブリッジ:「私は3つあげるとすると、卒業後の進路についてやはりまず言いたいですね。アカデミアでのキャリアが限られているという話がありましたが、アカデミアに限らず民間においても感じます。とにかく日本語ができないと就職先は限られてしまいます。2つ目はこれに関連することなのですが、外国人留学生が卒業後どのくらい就職できたのかというのをしっかりと公式な数字として公表した方がいいと思います。最後に、現在は東京大学の卒業生ネットワークへのアクセスが限られているように思います。やはり卒業生からの実際の大学での生活や研究についての声を聞けるようになるといいですよね。」

-お二人ともどうも有難うございます。お二人のコメントを聞いていると、東京大学のランクが上がったということ以上に、外国人留学生からみた東京大学の現状が少し見えてきたように思います。

♢♢♢♢

QS大学ランキングはAcademic Reputation(学術関係者からの世評)、Employer Reputation(雇用者からの世評)、Citations per Faculty(教員一人当たりの被引用数)、International Student Ratio(留学生比率)、Faculty/Student Ratio (教員あたりの学生数)、そしてInternational Faculty Ratio(外国人教員比率)の5つの項目をもとにランク付けされます。

今回、QS大学ランキングで東京大学より上位にランクインしたケンブリッジ大学とシンガポール国立大学も経験した外国人留学生の話を聞く中で、東京大学の学術的なレベルの高さを繰り返し二人が話していました。これはまさに東京大学のAcademic Reputation(学術関係者からの世評)のポイントが高いというところと重なります。

東京大学の世界ランキングを下げている要因の一つである留学生比率のところに関しては、実際に東京大学に留学している二人の話からは単純に留学生の数を増やすことにだけ注力をしていくのでは、不十分なのではないかという現実が浮き上がってきました。二人の東大留学生の話からは、アカデミアおよび民間企業での就職が難しいという「出口が見えない」という悩みが聞かれました。入学したはいいけど、卒業後は不安だらけ、という状況だという話が広まっていけば、日本に留学に来るのはハイリスク過ぎる、という判断をする人も一定数出てきておかしくないのではないでしょうか。
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松本麻美
松本麻美
「異人・変人と変革を」外国人ハイスキルエンジニアとベンチャー企業をつなげることで、一人一人が情熱を思い切り追求できる世界を創ることを目指すアクティブ・コネクターを2013年5月に創業。17歳で単身渡英。ウェールズの寄宿舎での2年間の生活、カナダでの大学生活を経て、就活やインターンに明け暮れる大学院生活を送ったのち外資金融に入社。311を機に退職をし、パキスタンに渡る。その後情熱に突き動かされるままに起業。

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