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盲目的な「欧米モデル」は  危険信号!  “ダイバーシティマネジメント議論”の落とし穴

「ジローさん」の名で悩める人事界から絶大な信頼を寄せられる人事のスーパープロフェッショナル中澤二朗氏と、多様性と本格的に向き合い始めた日本企業の課題についてお話を伺いました。人事キャリア30年、採用の現場では数多くの留学生との面接を重ね、厚労省による日本企業の高度外国人材受け入れ促進では有識者委員を務められてきました

本質を突かない日本・欧米比較の末にもたらされ「ダイバーシティマネジメント議論」がもたらす問題点と、日本企業が本当に取り組むべき課題設定について語って頂きます。

 

IMG_3554 (1)           ジローさんこと中澤二朗氏

欧米は“ダイバーシティマネジメント先進国”。それ、本当?

 やや込み入った話をします。よって結論からお話します。

「欧米はダイバーシティマネジメント(*1)ができている。しかし日本はできていない。だから日本はもっと真剣に取り組む必要がある」

そんな議論が今まかり通っています。でもそれ、本当でしょうか。何か大事な視点が抜け落ちていないでしょうか。こう受け止めてしまうと、次にふれる雇用慣行の話と、辻褄が合わなくなるからです。

2つの雇用慣行。欧米は「仕事」優先、日本は「人」優先

言うまでもなく、欧米の雇用慣行は職務主義です。職務給に代表されるように、「人」より「仕事」に着目するところに特徴があります。採用は欠員補助のために行われ、応募の時点で明確に求める「仕事」が存在し、応募者に合わせて業務をつくるという概念はありません。優先されるのは、何をどれくらいやったかであって、誰がやったかはではありません。人の違いや多様性は二の次。だから同じ仕事をしていれば、同じ賃金が支払われます(同一労働同一賃金)。

いや、むしろこのように、ダイバーシティマネジメントをしていないから職務主義が貫けているともいえます。それゆえに、却って、ダイバーシティマネジメントが出来ているよう映っているのではないでしょうか。

ところが、日本の雇用慣行は職能主義です。職能給に代表されるように、「仕事」よりも「人」に着目するところに特徴があります。そこでは顕在的成果に加えて、潜在的能力も、人柄も、相性も見ます。だからマネジャーには部下である「人」を活かす、育てるという責任があり、心労はきっと欧米の比ではありません。もっと言ってしまえば、日本のマネジャーほど、人の違いに気を配っている国は他にあるでしょうか。もし無いとしたら、日本こそ“ダイバーシティマネジメント先進国”の名にふさわしいのではないでしょうか。

「国民のダイバーシティ」と「ダイバーシティマネジメント」の混用

とはいえ、そこまで言ってしまうと、逆に違和感を覚えます。次に示すように、そもそも私たちは“2つの視点”、すなわち「国民の多様性」と「ダイバーシティマネジメント」(DMと略記)を区別することなく混用しているからです。

欧米は「ダイバーシティマネジメントをしていない」にもかかわらず、多民族であることから「それができている」と思い込み、日本は「ダイバーシティマネジメントをしている」にもかかわらず、単一民族(*2)であるから「それができていない」と決めつけている節があるからです。

 

スクリーンショット 2018-12-21 12.23.25

まさに“ダイバーシティマネジメント議論”の落とし穴がここにあります。それと知らずに議論を進めれば、そこから導き出される結論は怖くて使えません。

求められる「課題」の修正

“ダイバーシティマネジメント議h論”においても、日、欧米の違いをふまえた冷静な議論がまたれます。「原論・歴史・比較」をふまえた正しい課題の設定が望まれます。すなわち、冒頭の設問は次のように書き改められる必要があります。

・「日本の職能主義は、欧米の職務主義と異なり、人の多様性をマネジメントする機能が組み込まれている。ならば、先ずはそれを生かすことに専念する必要がある。

・その上で、単一民族であるがゆえに不得手な外国人材のマネジメントについて、更なる研鑽を積む必要がある。

・ただし、日本のマネジャーの負荷は欧米より高いと思われるので、過重な負担がかからないようなダイバーシティマネジメント手法も新たに編み出す必要がある。

 

正しい課題の設定を誤ってしまえば、その後の取り組みにもずれが生じ、取り返しのつかない状況となってしまいます。ダイバーシティに本格的に向き合おうとし始めている企業こそ、日本企業であるがゆえに得意としているマネジメント分野に自覚的になるということも実は大切な一歩目なのです。その上で日本企業だからこそ豊富に蓄えられていない外国人採用、雇用、マネジメント面における課題があると捉え、現場のマネージャー、社員に寄り添った方法で改革していく必要があります。

 

IMG_3561                ジローさん(右)と聞き手の弊社小林(左)納得の連続でした。ジローさん、ありがとうございました!

 

(注)
*1. ダイバーシティマネジメントはあらゆる属性(性別、年齢、国籍、雇用形態等)が対象です。しかし、ここでは、国籍問題にしぼって話を進めました。
*2. 日本は厳密には単一民族ではありません。

_______________________________________________

中澤二朗氏

1975年、新日本製鐵株式会社(現、新日鐵住金)に入社。1988年にIT分野の人事部門に異動後、2001年に新日鉄ソリューションズ株式会社(現、新日鉄住金ソリューションズ)発足と同時に初代人事部長に就任。2011年からは高知大学客員教授を兼職(現在、特任教授)。さらに2018年からは中央大学経済学部兼任講師に就任。それ以外にも厚生労働省「高度外国人材の日本企業就業促進に向けた普及・啓発事業」の有識者委員等、30年以上にわたって人事全般にたずさわり、現在は日本人事の底上げを掲げ、特に執筆、講演、集中講座などを通しては「はたらく」ことを根本から見つめ直す視点で学生から社会人までに深い問いを投げかけている。

小林喜子
小林喜子
Account Manager & Storyteller 就活への違和感を感じ、2つの内定を辞退。アクティブ・コネクターのインターンから参加し、フル参画。穏やかな雰囲気の中に秘めた情熱と行動力があり、ベトナムでのNGO活動、テニス部キャプテンだった経験がある。

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