前回は、人材のスキルや質を求めた企業の獲得競争が国境を越えて広がっている状況について触れました。この状況がすでに表しているように、人材獲得競争は国籍や人種といった面での多様性を受け入れることが前提であり、外国人・移民をその国において強みとする意識があってこそ参戦できるものです。今回はそんな中で日本の現状、視点を加えながら見ていきたいと思います。
政府も動き出した高度外国人材の活用
昨年6月閣議決定された日本再興戦略2016において政府は、人工知能やビッグデータ、ロボットによってもたらされる「第4次産業革命」を前に優秀な外国人人材の受け入れを積極化し高度外国人材に対する永住許可申請を世界最速レベルとなるよう簡素化することを明記しました。(URL)
同戦略では、外国人留学生の日本での就職率を現状の3割から5割に上げることも目指しています。前回の記事で触れた、アメリカの専門職に対する非移民ビザH1-Bの発給数拡大の件同様、国が率先して外国人の受け入れを促進していくことはトップレベルの人材を国に誘致する上で欠かせないことと言えるでしょう。
人材争奪戦、でも国内事情はそれぞれ・・・
上記のように人材の質に重きが置かれる今後、具体的に活用できるスキルや個人の強みは企業が見るポイントとなるでしょう。しかしもちろん、すべての人が高校・大学での学びの中で社会に出て即戦力となるような知識を得ているわけではなく、実践、経験を積みながらスキルを高めていくことはどのような業種についてもある程度共通していることです。それでも、そんな高卒者大卒者を企業が育てていこうと考えるか、自らが何らかの手段を使って身に着けていくことが当然とされるかには意識的に大きな違いがあります。前者はこれまで多くの日本企業が伝統的に保ってきた年功序列や終身雇用といった価値観に基づいている一方、後者は在学中のインターンシップの活用が奨励されたり、新卒一括採用といった概念を持たない海外において多く見られる傾向があります。それを表すひとつの例が大卒の就職率です。
大卒就職率74.7% 6年連続上昇、正規雇用増 文科省調べ
日本経済新聞 (2016年8月4日)
(URL)
College grads enjoy the best job market in years
CNBC (2016年 5月17日)
(URL)
これら日米2つの記事はどちらも、採用の現場はここ数年の中で大卒の求職者にとって最も有利な売り手市場の状況となっていることを伝えています。しかしその割合には大きな開きがあり、日本の大卒者の就職率がおよそ75%なのに対しアメリカでは21%です。日本では在学中に就職活動をして卒業前に内定を獲得することが当たり前とされますが、アメリカでは新卒採用は企業側にとっても大卒者にとってもあくまで選択肢のうちの1つであり、在学中の就職活動となればなおさらだれもが当たり前とする常識ではありません。
しかし何が完全に正しい、間違っていると簡単に言いきることはできません。イギリスでは大学を出てもそのスキルに見合った職場が用意されていないことが人材の質を持て余してしまっていると、大卒者の就職のあり方が問題視されています。(URL)
アメリカでも同様、大学教育を終え就職を望んでいるにもかかわらずそれを果たすことができない、大卒未就職者が問題になっています。(URL)
だからこそ日本で生まれる外国人人材という選択肢
それぞれの国には違った事情が交錯しているようです。それでも、世界を大きな視点で捉えすでに国境を越えた人材の争奪戦が始まっていることを考えると、求職者の意識の持ち方という点で見たときに企業の教育をあてにするのではなく自主的にスキルアップ行うことが当たり前だという意識を持つ外国人人材の方がより世界的な流れに沿っているように思えます。
留学生の日本での就職率を上げようというときに、留学生、外国人を優秀な一人材として受け入れることは人材獲得の目的であるハイスキルを持ち込むということに加えどのような意識で働くかという点で新しい空気を入れ込むひとつのきっかけになるのではないでしょうか。