昨今のベンチャー企業ブーム、国の政策が後押しするイノベーション推進・・・日本の未来はイノベーションにかかっているかのような時代の流れになっています。
では、そのようなイノベーションを牽引していくイノベーション人材とは一体どういう存在なのでしょうか。
単純に高いスキルを持つ高度人材でしょうか。発想がユニークな「変わり者」でしょうか。本コラムでは、今の日本に求められるイノベーション人材について、色々な意見や理論に基づき提案させていただきます。
技術革新ではなく、新たな市場開拓こそがイノベーション
まず、イノベーション(革新)とインベンション(発明)の違いというのがあります。日本ではこの二つが同義語のように使われがちですが、英語の単語としては、この二つは大きな違いがあります。インベンションは全く新しいもの・プロセスを生み出すこと、まさに日本語で言う発明です。一方、イノベーションというのは、向上させたり、飛躍的に貢献したりする、ということを意味します(参照)。
経済学者のシュンペーターは、技術革新よりも広く,生産手段や労働力等様々な生産要素を新たな形で結合させ、新市場を獲得したり、新たな価値を作るということをイノベーションとして捉えています。
日本ではベンチャー・イノベーションというと、すぐにどれだけ高度な技術が使われているのか、というような発想や、どんな風に目新しいのか、ということに注目してしまいがちですが、本来の意味でのイノベーションというのを考えた時には、「どれだけ新しい価値を提供し、新たな広い市場を開拓したのか」と定義して良いと私たちは考えます。
新たなことをつなぎ合わせる思考
では、新しい価値・市場を創造していくためには、どのような発想が大事なのでしょうか。
「イノベーションのジレンマ」で有名なクレイトン・クリステンセンはイノベーションには「一見、関係なさそうな事柄を結びつける思考」が重要としています。
また、イノベーションといったらこの人の右にでる人はいるのか、というくらいイノベーションの神のようなスティーブ・ジョブズは、「創造力とは、いろいろなものをつなぐ力だ。 一見すると関係のないように見えるさまざまな分野の疑問や課題、 アイデアやひらめきを上手につなぎ合わせる力だ」(カーマイン・ガロ著「スティーブ・ジョブズ 驚異のイノベーション」日経BP社)と言ったそうです。
新しい価値を作り市場を開拓していくためには、上述したように色々な異なることをうまくつなぎ合わせられるような発想を持っている人こそイノベーション人材と言えるのではないでしょうか。
異文化で生まれ育った人だからこそ見えるたくさんの「アイデアの種」
では、異なるものをつなぎ合わせられる発想ができるような人材<イノベーション人材>というのは、今の日本においてどんな人になるのでしょうか。
ここで考えられる一つのポイントとして、日本とは異なる市場<グローバル市場>におけるニーズを開拓していくことができるか、という点が言えるかと思います。
海外という市場のニーズが肌感覚でわかるというのは、何も特別な人ではありません。異文化で生まれ育ち、かつ日本のサービスやものについてのある程度の思い入れがある人であれば、全ての人がイノベーション人材になりうると私たちは考えます。
例えば、あるアメリカ人の外国人留学生が「日本の自販機にあるホットドリンクは素晴らしい!」と熱弁していました。アメリカでは自販機でホットドリンクがないとのことです。
日本人からするとホットドリンクが自販機で購入出来ることが当たり前すぎて、そこにある価値を感じにくくあります。しかしアメリカで生まれ育ったというだけで、新たな価値を見出せます。
他にもインド人の外国人留学生が、日本で見つけたという小型モーター船が、インドのある村と村をつなげるクリティカルな移動手段になると考えて熱弁していたケースもあります。インドではそのような「ちょうど良い大きさとスピード」の船がないから、とのことです。
日本人が普通に生活をしていたら、インドのある村の状況ということを考えることはほぼ難しいと言えると思います。
♢♢
イノベーション人材というと、まるでメンサに入れるような天才を考えてしまいがちかと思います。しかし、日本のテクノロジー・サービスで、日本以外の市場を開拓していくという観点から考えれば、異文化で生まれ育った人であれば誰でもイノベーション人材になりうるのです。
外国籍の高度人材、外国人留学生はまさに御社にとってのイノベーション人材です。御社のイノベーションを推進していくために、外国人採用を戦略的に考えてみませんか?