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ベンチャー企業が今すぐ「企業の価値観」を言語化すべき3つの理由

シリコンバレーにおける成長するスタートアップには、一つの共通点があるとよく言われています。それは、会社で「価値観(バリュー)」が定義され、そしてその会社独自の企業文化が根付いているという点です。企業の価値観で有名なところでは、Air BnBがよく例に挙げられます。Air BnBのCo-FounderでCEOのBrian Cheskyさんは、「企業文化で、絶対しくじるな!」というブログ(URL)を書いています。ちなみに、ブログの原文タイトル「Don’t fuck up the culture」からもかなり強い思いがあることがみてとれます。

多くのベンチャー企業が、「ミッション、ビジョン、バリュー」の三本柱は、設立の時には当たり前のように作るかと思います。でも実際にその中でもバリューが本当にどのような意味を持っているか、ということまで考えて作っているでしょうか。そもそも意気投合した共同創業者、初期創立メンバーなのだから、わざわざ価値観なんかを定義づける必要を感じない。もしくは、小さいチームのうちから、そんなことまで書くなんて気恥ずかしいとすら思うのではないでしょうか。

しかし、会社が大きくなる前に、できれば初期の段階でこの価値観を言語化し定義しておくことは非常に重要です。今回はベンチャー企業が価値観を定義すべき3つの理由についてお伝えします。特に、外国人エンジニアを積極採用している会社においてはこの3つのポイントはさらに重要性を増していきます。

メリット1:日常の不要なストレスを避けられる

価値観を言語化することの一つ目のメリットは、社員同士の(もしくは時に社員から経営陣への)お互いの行動・言動への、「不要」なストレスを避けられるということがあります。

価値観を言語化して共有していないと、どんなことが起きるでしょうか。ある社員が「よかれ」と思ってやっていることは、他の社員にとっては、「ありえない」ということだったり、「アンプロフェッショナル」なことに映ります。そしてそこでストレスが生まれ、関係がギクシャクしたり、物事の進みがおそくなります。

例えば、Aさんという社員は、物事は完璧でなくてもとにかくまずは大枠だけでも完成させてそこから早いスピードでPDCAを回してくのが「良いこと」と考えているかもしれません。一方で、社内のBさんやCさんは完璧主義で、物事はすべてしっかりと考え抜いた上で、中途半端なものではなく丁寧に作り込むことが「良いこと」と考えているかもしれません。

Aさんが良いことだと思ってやっていることは、Bさん、Cさんからすれば、極めて「アンプロフェッショナル」「非常識」なことで、ストレスは募るばかりです。

しかし、ここでもしも会社の価値観が定義されていたらどうなるでしょうか。例えば会社の価値観として、「失敗を恐れるな!とにかくスピード感を持って、不完全でもいいから突き進め!」というのがあったとします。すると、BさんCさんは、Aさんの行動にこそ学ぶべき、と考え方を変えるでしょう。考え方が変わるところまでいかなくても、せめて、Aさんの行動を批判的に評価することはなくなるでしょう。

本来会社が目指したい方向はどこなのか。それをしっかりと共有しておかなければ、社員同士でお互いへの「評価」が行き交い、ストレスが募ったり、不要な議論が繰り広げられることを避けられません。特に外国人エンジニア、外国籍社員を採用すればこの問題は顕著になります。なぜならば、日本と異なる異文化で生まれ育った人たちが、日本人の多くの人がもつ「一般常識」「一般的な価値観」を共有していないのは、当たり前だからです。もっと言えば、実は同じ日本で生まれ育った日本人同士ですらそれぞれが違う「文化」を持っているはずです。

メリット2:採用すべき人物を効率的に見分けられる

価値観を言語化するメリットの二つ目は、御社で本当に採用すべき人を見極められるようになることです。

企業の成長は人なくしてありえません。同時に企業をダメにしていくのも、人であるのも事実です。知名度がまだそこまでないようなベンチャー企業・中小企業であれば、応募してくれただけでも、ありがたい。猫の手も借りたいほど忙しいから、とにかく特別問題がなくて、いい人そうだったら、即採用!という気分になってしまうかと思います。しかし、ここで本当に企業が大切にしたい価値観を持っているかどうか、という確認を怠ってしまうと、まさに「会社をダメにしていく」社員を誤って採用してしまい、後から会社がごちゃごちゃと泥沼に・・・という展開になりえます。

本ブログの冒頭に書いた、企業文化・価値観を非常に大事にするAir BnBは一人目のエンジニアを採用するまで、本当に人物の見極めに慎重で最初のエンジニアの採用までに何千もの履歴書をみて、何百もの面接を繰り返し、採用までに6ヶ月もかけたそうです。(URL)

企業が大切にしたい価値観をしっかりと言語化し、それを面接では色々な角度から検証することをお勧めします。例えば下記のように実践できます。

例) 会社の価値観: 「コンフォートゾーンを抜け出せ」

面接では、
・今までに取り組んだ一番の挑戦は何ですか?その時どんな気分でしたか?
・今まで思い切り挑戦して失敗したことを教えてください。その時どんな気分でしたか?
・今まで一番自分が成長したと思える経験を教えてください。それはなぜ成長できたのですか?その時、どんな気分でしたか?そこから何を学んだんですか?

といった質問を通して、その人が挑戦することや経験をどう受け止めるのかという思考・姿勢を探ることができます。

採用面接をする際に、意外と「直感に頼る」形で面接をされる方が多くいるようです。もしくは、よくある決まり切った質問しかされない方もいます。いくら採用する立場といえど、面接という場面になればリラックス仕切っていないこともあり、良い質問がぱっと思い浮かばないこともあります。

事前に言語化した価値観を確認できるような面接の質問文を用意しておけば、スキルのみに留まらず企業との価値観を共有できる人かを確認することができます。またできれば、質問内容も様々な視点を持っているチームメンバーからの意見を取り入れながら作り上げていくとより多角的な項目が並びます。外国人エンジニア、外国籍社員を採用する際には、この面接の作り込みは非常に重要です。もともと言語的な壁があり、相手のニュアンスをしっかりと汲み取れないこともあります。また、異文化で育ってきたが故に、その人の性格や志向性が、それ以外の「印象」によって左右されてしまい、見極めが難しくなってしまうことが往々にしてあります。もちろん日本人でも同じことは言えるのですが、異なる文化コードで振舞われる人に対しての見極めは、想像以上に難しいものがあります。

メリット3:社員に自信を持って裁量権を渡せるようになる

価値観を言語化することのメリット三つ目は、経営陣として社員にもっと裁量を与えらえるようになり、より魅力的な企業文化・はたらく環境を築けるようになるということです。

ベンチャー企業に就職を希望する人の多くは、ベンチャーならではの自由さ、裁量権の大きさを期待しています。また期待も大きいだけに、入社したら思い切り色々なアイディアを提案したり、実行しようと考えている人も多いかと思います。これは外国人エンジニア、外国籍社員を採用した場合は、特にありえる状況です。

そういった社員への期待に応えていくためには、会社としてしっかりとしたガイドラインを引いておく必要があります。そのガイドラインとして価値観が非常に重要になってきます。価値観が定義されていない状況では、社員が自らやる気溢れてイニシアティブをとって行うことで、経営陣から見ると「とんちんかん」な方向に行ってしまうことはよくあることです。価値観を言語化することは、ベンチャー企業の経営者にとっても、そこで働く社員にとっても、裁量権という観点からはメリット尽くしといえるでしょう。例えば、下記のような例が挙げられます。

例) 社員がイニシアティブをとり、会社が今までクライアント企業に直接出向いて丁寧に説明をして営業をしていたことを、今後全てウェブ面談にするという提案をした

ウェブ面談を行うことにより社員の時間がより有効に使えるようになり、はたらき方改革にもつながった。しかしウェブ面談を行うことによって、一部の顧客は、それなりの金額のサービスを売っているのに、全てウェブで済ませるのか!と満足度が下がることも考えられる。また、実際に対面で会っていないが故に、そのサービスの魅力が伝わりきらないという懸念もあるかもしれない。

さて、こんなとき、この社員のイニシアティブは、良いとされるべきか、悪いとされるべきか・・・これは全て会社が言語化する価値観にかかっています。

例えば「何より顧客に顔の見える丁寧なサービスを」という価値観を掲げていた場合があれば、このようなウェブ面談に全て切り替えるというのは、少し受け入れがたい提案かもしれません。
一方で、「無駄は一切省く。シンプルイズザベスト」という価値観を掲げ、それに賛同する顧客でなければ顧客でない、というくらい振り切れていた場合は、このイニシアティブは、素晴らしい提案になります。

価値観が定義されていなかったら、同じ提案であれ会社にとっても社員にとっても全く違う意味を持ってしまいます。価値観が言語化できていないと、何が良くて何がダメなのか分からない、という暗闇を手探りで歩くような状況の中で、社員が自由に働けない窮屈な状況になってしまうでしょう。

♢♢
会社の価値観を言語化するメリットにつき、理解が深まったでしょうか。
今は会社で特に問題が起きていないし、みんな信頼しているから大丈夫。そう思われる方もいらっしゃるかと思います。そんな状況であれば、特に、そのタイミングで良いメンバーが集まっている状況でこそ価値観を言語化しておくことをお勧めします。そうすることで、その後同じような価値観を持つ人を集め続けられます。

繰り返しになりますが、外国人エンジニア、外国籍社員を採用するということは、日本人が「当たり前」と思っていることを、共有していないことこそが、「当たり前」という状況です。アインシュタインの名言に「常識とは、18歳までに身につけた偏見のコレクションのことを言う」というのがあります。
日本人が当たり前だと思う常識は、ただの偏見にすぎません。同時に外国人エンジニア、外国籍社員にとっても同じことが言えます。そんな偏見だらけの人間の集まりの中で、うまく物事を進めていくためには、価値観を言語化することは、とても大切なことです。逆にそれをしないが故に、何か外国人エンジニア、外国籍社員と問題が起きた場合は、それは誰のせいでもなく、価値観を決めていなかった経営陣・会社の責任といえるでしょう。

また別の記事では価値観を作り上げる過程におけるフレームワークやポイントもお伝えします。ご参考になれば幸いです。

#異人・変人と変革を

 

 

松本麻美
松本麻美
CEO/Founder of Active Connector 女子学院高校2年次中退の後、経団連の奨学金を受けて英国United World Collegeに留学。McGill Universityにて開発学、政治学を学び、その後東京大学大学院教育学研究科/比較教育社会学専攻で修士課程修了。外資系金融機関で社会人としてのキャリアをスタートした後、NGOと日本政府のパキスタン開発援助案件に携わる。 2013年にアクティブ・コネクター株式会社を起業。現在、同社代表取締役として、「異人・変人と変革」に取り組む。

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